2023年01月20日
症例94 治らない坐骨神経痛にお悩みの女性
症例
こんにちは。院長の小畑です。今回は坐骨神経痛がだんだん強くなって日常生活が困難になっていた女性の症例です。
目次
患者様について
S様 20代女性 保育士
来院の4ヵ月前に座っていると右腰の下部が痛くなりその後症状が引くことはなく、来院1か月前には両側の腰が歩行や自転車に乗っていても痛みを感じるようになってきたとのことでした。かなり痛みが強く満足に動けないため休職されている状態でした。
どんな状態だったの?
診察の段階では腰を前に屈めたり、じっと座っていると痛みが出る(そこから立つときも痛い)という症状と両下肢の痺れがみられました。そこに加えて前述の歩行や自転車に乗った際の痛みがあるような状態でした。
このような症状の出方は「坐骨神経痛」によるものと考えました。
原因は何?
通常どこかを傷めていても、20代で余程の労働環境でもない限りたいていの痛みの症状は数か月もすれば治まるものです。S様の場合は治まるどころがだんだん症状が強くなっています。それがなぜなのか解き明かす必要があります。
S様を診察していくと考えられる原因がありました。それは「痛みを感じる神経の閾値」に問題があるということです。
痛覚は軽い刺激では通常反応しません。ある一定の刺激以上の刺激を加えた時に痛覚が反応し始めます。
この痛覚が反応するラインを「閾値」と言います。刺激が閾値を超えると痛みを発生させます。この閾値が下がって弱い刺激でも痛みを感じるようになっているとS様のような症状が現れたりします。
この閾値が下がる原因に自律神経の乱れがあります。
自律神経の一つである交感神経は基本的には仕事やスポーツなど集中する場面で盛んになります。しかし過度な精神的ストレスや疲労などが続くと働き過ぎてしまい様々な不調を引き起こします。その不調の一つに閾値の低下があります。
このような状態になると、通常では痛みを感じない刺激でも痛みを感じやすくなります。
以上のことからS様の治療は自律神経を整え下がってしまった閾値をもとに戻し痛みを感じにくい状態にするように治療を進める必要がありました。
どのように回復したの?
仕事復帰ができる状態になるまで約2ヶ月、ある程度調子よく過ごせるまで2ヶ月半でした。最初は1週間に1回のペースで治療を進めていきました。
1回目施術後:左側の腰痛が軽減、右側はかなり痛い。出先で歩いたら左腰の痛みが出てきた。
2回目:痛みの度合いが最初が10とすると、右は1~2、左は6~7ぐらいになっている。前屈時の痛みと左下肢の痺れが減。
3回目:左下肢の痺れが引いたら、右下肢の痺れが出てそれが引いたら腰痛が出てきた。症状が動いている。日常生活は問題なく過ごせている。
4回目:術後数日は痛みがなく過ごせていた、外出もできた。その後腰痛が出てきた。
5回目:足の痺れや腰の前屈でやや痛みを感じるが症状が出ても長引かなくなっている。
6~7回目:途中腰痛を感じることがあったがだんだん痛みが引いている。
8回目:痛みと痺れはかなり引いている、長時間同じ体勢でいると少し症状がでる。
9回目:仕事に復帰した。無理しなければ働ける状況に。少し無理した後はその後1日くらい腰痛があった。
10回目:腰から臀部に鈍痛がある。その他は大丈夫そう。
11回目:調子よく仕事ができている。
このような流れで回復されていきました。
以降は症状が出始め次第お越しいただき調子の維持をしています。
東洋医学的見解
※ここでは東洋医学の診察に基づいた解説を行います。興味のある方お読みください。
脈:緩・洪、左尺位沈位が弱い
舌:暗・やや赤め、尖紅
所見:手足の冷え、汗をよくかく、めまい、夜間中途覚醒、胃痛など
以上の内容などから心脾両虚→心陰虚+肝うつ気滞が発生していると推測しました。
心火の発生により閾値の狂いが生じていると考えその元凶となった脾虚、それを悪化させる要因である肝うつによる木剋土などを考えながら治療をしました。
主に使用したツボ:太白、太衝、衝陽
施術者の思い
当院は東洋医学専門の鍼灸院とのことで来院される患者様の症状も特殊です。整体や病院に行ったけれどもあまり改善しなかった、原因がわからないと言われたという患者様が非常に多いです。今回のS様のように自律神経の乱れによって閾値の問題が発生したというケースは当院では珍しくありません。痛みの問題は決して筋肉・骨・姿勢だけが原因ではないということを知って頂ければ幸いです。
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