こんにちは。院長の小畑です。

今回は右側の顔面神経麻痺でお困りだった患者様の症例です。

目次

1. 患者様について


2. どんな状態だったの？


3. どのような原因が考えられたの？


4. 治療回数は？


5. どのように治療していったの？


6. 東洋医学的見立て


7. 施術者の思い

患者様について

M様　５０代　女性　自営業

来院される半月前に右側顔面神経麻痺が発症し、すぐに病院でステロイドによる治療を開始したがなかなか治りがよくない状態で当院にご来院くださりました。

どんな状態だったの？

M様の顔面神経麻痺は比較的症状の強いものでした。

顔面神経麻痺の評価法である「４０点柳原法」では、４０点満点の減点法で２０点以上が軽症、１８～１０点が中等症、８点以下を重症と評価します。

M様の来院時は１４点と麻痺の症状が比較的強く出ていました。

どのような原因が考えられたの？

顔面神経麻痺はヘルペスウイルスをはじめとする種々のウイルスが顔面神経に炎症を引き起こすところから発症するというのが一般的に知られています。そのような要因の場合はプレドニンというステロイドの服用や点滴で効果を示すことが多いです。

しかし今回M様はすでにステロイドで炎症を減らす治療を受けておられましたが、はっきりとした効果を得られているか不明な状況でした。

M様は普段から早朝に市場に買い付けをされるお仕事をされていて慢性的な寝不足と不規則な生活による体内時計のズレが重なっている状況でした。

疲労は体の弛緩・むくみを生みます。

そのむくみによる顔面神経ルートの圧迫で神経機能が低下している可能性、

また体内時計のズレから起きる交感神経の高ぶりが顔面神経ルートの血流障害を引き起こしている可能性、

この２つを意識して治療しました。

治療回数は？

ほぼ完治するまで６回、期間でいうと約１か月半でした。

どのように治療していったの？

顔面神経周辺のむくみを早く引かせるようにすること、交感神経（体をONにする神経）の高ぶりを鎮めること、これら２つをテーマに治療していきました。

１回目治療時：柳原法での評価は１４点。次回３日後。

２回目：自覚的に少し症状が改善しているように感じる。柳原法のでは１８点と４点アップ。次回４日後。

３回目：動きに少し改善がみられる。柳原法では２２点。この時点で軽症のラインまで回復。次回１０日後。

４回目：かなり症状が改善している。柳原法で３０点まで回復。次回１０日後。

５回目：さらに改善が進む。柳原法で３６点。次回２０日後。

６回目：ほぼ症状が完治。柳原法で３８点。ほぼ違和感なく過ごせているとのことで今回で一旦終了となりました。

東洋医学的見解

※ここでは東洋医学の専門的見解からの解説をします。興味のある方はお読みください。

脈は洪緩、営分に反応あり。

舌はやや暗、薄白苔、日によっては尖紅。

その他に食後の眠気などの所見あり。

基本的には損病ベースで、心火火旺と脾の気虚があると判断。

普段の寝不足から心火が発生→陽明経に火が上がり内風生じ→陽明大腸・胃経の経気を内風が阻滞して顔面神経麻痺を引き起こしたと考えた。

基本的には心火を抑え、陽明経の阻滞を動かすように施術、また顔面神経の回復を早めるためにも脾の気虚を補った。

主に使用したツボ：曲沢、太白、太陽、迎香、地倉、頭維など

施術者の思い

顔面神経麻痺は鍼灸院では比較的よくみることのある疾患です。軽度のものは病院でのステロイド治療で回復しますが、M様のような中程度～重度のものは治りにくいものもあります。

病院で治らないから仕方ないと放置してしまうとそのまま麻痺が残ってしまうケースもあります。

いずれにしても早期の治療開始がとても重要です。「顔面神経麻痺かな？」と思ったらすぐに病院と当院での治療を並行して進めてみてください。圧倒的に早期に回復しやすくなります。

（※症例によって個人差はありますので、全ての症例に当てはまるものではありません。）