2022年03月11日
症例79 がん治療後の下肢のむくみに悩む男性
ブログ
こんにちは。
院長の小畑です。
今回は、前立腺がんの治療後に下肢がむくみはじめ、ぞうの脚のようになってしまっていた患者様の症例です。
目次
患者様について
Robert様
アメリカ人
64歳 男性
主訴: 下肢のむくみ(浮腫)、下肢の感覚過敏
経過:前立腺がんに対して高密度焦点式超音波治療を受けたあと、下肢にむくみが生じるようになった。
治療を受けた病院では、なんらかの感染があったのではないかと疑っていて、抗生物質を飲んでいるもののむくみが減っていない状況だとのこと。
その他病歴:Ⅱ型糖尿病、6歳の時に心臓の開胸手術。(先天性中隔欠損)、不整脈、心臓のアビレーション、静脈瘤
むくみってどんな時に起きるの?
浮腫(むくみ)は非常に様々な原因で起こりますので、原因の特定は簡単ではありません。
主には以下のような要因です。
・循環の問題(血管が狭くなったり、逆流したりで血の流れがわるい)
・臓器の問題(心臓、肝臓、腎臓など)
・リンパ節の問題(リンパ節がつまっているなど)
・血中の栄養素の問題(低たんぱく血症など)
・細胞内の栄養状態(栄養の取りすぎ)
今回の場合は特定の処置後に起きたむくみでしたし、両下肢に限られたむくみでしたので、すくなくとも下腹部~下肢にかけての問題が疑われました。
超音波治療後の発症でしたので、前立腺周辺の器官に問題がある可能性が高いと感じました。
(静脈瘤は以前からあったようですが、術前にここまでのむくみは起きたことがなかったようですので、静脈瘤が直接的な要因ではないという見立てになりました。)
前立腺周辺でむくみの原因になるもの
腎機能の問題
前立腺や鼠径部などのリンパ節
下腹部~鼠径部あたりの血管
上記のような内容を改善するツボに鍼を打てばよいのだろうという推測はこの時点で立ちました。
鍼は何本?
治療に使った鍼は
2~4本でした。
初診だけ4本、その後は2本で治療していきました。
すべて脚に鍼のツボに鍼を打ちました。
治療頻度は?
最初の3回は週に1回。
4~5回目は10日に1回。
6~7回目は2週間に1回。
回復にかかった回数は?
ぞうの脚のようにむくんでいた脚が普通の脚になるくらいまでには7回ほど治療を要しました。
回復の過程は?
2回目の来院時点
前回よりはややむくみは軽くみえるが依然としてゾウの脚のよう。感覚過敏はすでに消えていました。
3~4回目
少しずつむくみが減っている程度。
5回目
朝起きた段階では下肢にほとんどむくみがない状態に。昼からむくみが増える状況。
6回目
むくみは激減。ふつうの脚に見えるようになった。
治療の方向性は?
下肢のみに出ていたむくみでしたので、下腹部以下の器官に働きかける必要があると考えました。
ですので、今回はおもに腎機能を上げることに重きを置いたツボにしました。
東洋医学的な見立て
※この項目は専門的な項目になりますので、ご興味のある方だけお読みください。
脈:細緩、左尺位内側に沈弱脈
舌:淡、紫、白苔
随伴症状:頻尿、坐骨神経痛、静脈瘤、
頻尿や坐骨神経痛(腰痛)など、腎と冷えに関わる症状が多く、脈象や舌象も腎に関わるような典型的な所見であったので、腎の陽虚は間違いないと判断した。
補腎陽をベースに利水のツボを組み合わせ処置した。
配穴:
左水泉、左陰陵泉
(初回のみ右陰陵泉、左三陰交を加えた)
施術者の思い
今回、がんの処置後でしたが、リンパ節を切除したわけでもなくはっきりとした要因がわからない状態でした。
推測では超音波治療をする際に、なんらかのリンパ節を焼いてリンパの機能不全を起こしている部分が出ているのではないかとも推測しながら治療していました。
結果的に腎機能を高めることにより、リンパ機能への負担を減らすことができたのではないかと思います。
鍼灸治療は、とくに薬をつけるわけではなく、あくまで人体がもともと持つ機能でうまく働いていない部分を働くようにしむける治療です。
薬を使用しないという点で、体にやさしく、同じようながんの術後のむくみ、他の手術後のむくみなどの軽減にしっかりと役立てることができるということを実証できた例であったと思います。
もちろんすべての例にあてはまるわけではないのですが、多くの方のお役に立てるかと思います。
また病気に関連するむくみでなくても、女性のなやみとしてのむくみも非常に多いのではないかと思います。
そのような体質的なむくみに対しても当院の行うような東洋医学にもとづく鍼灸はお役に立てることがたくさんあると思います。
ぜひお悩みの方はご相談ください。
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