2024年01月26日
症例111 突然顔面神経麻痺になった男性
症例
こんにちは、副院長の藤森です。
今回は来院の1カ月前より発症した顔面神経麻痺でお困りだった患者様の症例です。
目次
患者様について
H様 50代 男性
発症後病院にてすぐにステロイド治療を開始、ある程度の回復はみられたが、それ以降回復が進まなかったため来院されました。
そもそも顔面神経麻痺とは
顔面神経は脳から顔の筋肉へ向かう神経のことで、途中で何かの障害が起きて神経の流れが悪くなると、顔面神経麻痺が発生して顔の筋肉が動かなくなります。
原因としては一般的には顔面神経の「ウイルス感染」により神経に炎症や損傷が発生し神経伝達が悪くなることで発症するとされているものが多いです。その他に腫瘍や外傷で神経を圧迫・損傷させることで発症するものもあります。
またウイルス感染は疲労状態などで免疫力が低下している時に起こりやすくなります。
病院での治療は「ステロイド」で炎症を抑える、ヘルペスウイルスが原因の場合は「抗ウイルス薬」を使うなどが一般的です。
どのような状態?
顔面神経麻痺の重症度をはかる「40点柳原法(40点満点で正常)」では来院時は18点から20点とかなり重症の部類となっていました。発症直後は4点だったそうです。発症直後のステロイド治療である程度の改善はみられたようですが、18点から20点のラインからなかなか改善が進まないようでした。
状態としては、極端な左右差はみられないが、全体的に運動麻痺が多くみられました。
とくに、鼻を動かす動作が全くできない状況で、その他は目をつぶる、おでこにしわを寄せる、頬を膨らませる、口をへの字に曲げるなどの動作が行いにくい状況でした。
H様を東洋医学的に診察していくと「疲労」が強いという所見がみられました。ただご本人に聞いたところそこまで疲れるような事は心当たりはないとのことでした。H様の場合は長年かけてゆっくり時間をかけて疲れがたまっていったことで発症したと推測しました。
では「疲労」があるとなぜ顔面神経麻痺が発症するのでしょうか?
上記の「そもそも顔面神経麻痺とは」の説明にもあるように顔面神経の流れが悪くなる要素があると顔面神経麻痺は発症します。疲労は身体全体の機能を低下させます、とくに胃腸機能に影響が出やすく「栄養」の吸収が悪くなります。神経の正常な働きにもこの「栄養」が必要です。顔面神経に必要な栄養が運ばれにくくなり神経の流れが悪くなり顔面神経麻痺が発症していると推測しました。
どのように回復した?
H様の場合、疲労が原因で胃腸の機能が低下し、顔面神経が働くに十分な栄養が運ばれず発症している背景からまずは胃腸の消化吸収の力を上げ、栄養が体にしっかりはいっていくようにすること、疲労回復しやすい状況にすることの2つをテーマに治療をはじめました。
柳原法のスコアの取り方ですが、1項目につきほぼ正常が4点、部分麻痺が2点、高度麻痺が0点が10項目で40点満点となっています。ですが回復過程でどうしても正常と部分麻痺の間・部分麻痺と高度麻痺の間の動作が存在します。ですので私独自に正常と部分麻痺の間を3点、部分麻痺と高度麻痺の間を1点を追加して計測しております。
初診時:柳原法スコア19点、鼻を動かす動作が全くできない状況で、その他は目をつぶる、おでこにしわを寄せる、頬を膨らませる、口をへの字に曲げるなどの動作が行いにくい状況。重症時は治療の頻度を少し狭めて回復が進みやすいように治療。最初の4回程度は1週間に2回の治療を行いました。
2回目:スコアは19点、頬が前回に比べ少し膨らましやすい。
3回目:スコア19点、左右の対称に少し近づいた、鼻を動かす動作が少しできるようになった。
4回目:スコア20点、口をへの字に曲げる、口笛を吹くの動作が改善傾向。次回より1週に1回の治療頻度へ。
5回目:スコア21点、額のしわ寄せが少ししやすくなっている。
6回目:スコア22点、片目をつぶりやすくなっている。
7回目:スコア22点、額のしわ寄せ、目をつぶる、口をへの字に曲げる動作がしやすくなっている。
8回目:スコア24点、全体的に改善傾向。顔の安静時非対称具合もやや改善、口笛もさらに吹きやすくなっている。次回より2週間に1回の頻度へ。
9回目:スコア26点、左右もかなり対称に。
10回目:スコア28点、強く目をつぶる動作がほぼ正常に行えるようになった。
11回目:スコア28点、口をへの字に曲げる動作がほぼ正常になった。
12回目:スコア32点、額のしわ寄せがほぼ正常に行えるようになった。
13回目:スコア34点、口笛が正常にふけるようになった。
14回目:スコア34点、前回と同様。ほぼ正常になりつつあるので次回より3週間に1回の頻度へ。
という流れで現状ほぼ正常になってきています。今後少し残っている症状を減らして少しずつ40点へ近づけるようにしていきます。
東洋医学的見立て
脈:沈細緩、69難腎虚
舌:やや尖紅、白苔
その他:疲れると腰痛、軟便、尿の回数少し多い
などがありました。基本的には腎精不足とみて治療を進めました。
主に使ったツボ:復溜、太谿、頬車、地倉、迎香 など
施術者の思い
病院の治療がある程度のところから効果が出なくなったことでH様は来院されましたが、当院に来られる顔面神経麻痺の患者様はこのようなケースが非常に多いです。炎症が原因で神経障害が起きている場合は病院でのステロイド治療は有効です。有効な場合は効果はわかりやすく出ます。逆に症状の改善があまり進まず効果が薄い場合はすぐに鍼灸院での治療を始めることをお勧めします。
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