2023年08月23日
症例107 突発性難聴による聴力低下・耳閉感
症例
副院長の藤森です。今回は突発性難聴の患者様の症例です。
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目次
患者様について
N様 50代女性
来院される1か月前に左耳の聞こえが悪くなり、その後病院にて治療を開始したがあまり改善がみられないため当院に来院されました。
突発性難聴とは?
こちらの解説をご覧ください!→突発性難聴とは?(クリックまたはタップでページが開きます)
状態は?
突発性難聴は今回が初めてではなく数回繰り返しているとのことでした。突発性難聴は回数を重ねると治りが悪くなったり、聴力が悪化しやすくなります。
N様の場合、左耳の聴力低下(体感では低音が聞き取りにくいが、聴力検査では高音が顕著に聴力低下がみられる)、耳閉感、耳鳴り、耳周辺の感覚がにぶいという症状がありました。
高音域の低下が顕著なのはおそらく突発性難聴を繰り返した結果聴力が下がったままになっていると推測しました。
原因は?
突発性難聴の原因は基本的には、「ウイルス感染」と「内耳循環障害」とされています。
病院で行われるステロイド治療で回復しやすいのはウイルス感染によるものです。その他は内耳の血流をよくしたり、むくみを引かせる薬を使い内耳循環の改善を図ります。この段階で回復される方もいますが、N様は残念ながら効果があまりなかったようです。
今回当院で診察を行ってわかったことは、「交感神経の高ぶり」がみられる所見があったことです。
交感神経が高ぶると、耳の中の「聞こえの細胞」を栄養している毛細血管が縮んで細くなり、必要な栄養が届けられず細胞が弱って聴力が低下することがあります。
またN様は仕事後など疲労時に症状が強くなると仰っておられ、疲労すると交感神経が高ぶりやすくなるという所見もみられました。
要約すると、疲労がたまる→交感神経が高ぶる→聴力の細胞への血流が悪くなる→細胞の栄養が足りなくなり聞こえが悪くなる、という流れで発症したと推測しました。
耳鳴り・耳閉感・耳周辺の感覚の鈍さも疲労時に強くなる傾向にあるためこちらも交感神経の高ぶりによる血流悪化などの循環障害、耳の内外の感覚過敏などが発生していると考えました。
どのように回復した?
N様を回復へ導くカギは「疲労回復」にあります。疲労を回復しやすくすると交感神経の高ぶりがおさまり耳の中の血流が正常に戻り細胞が栄養され聴力が徐々に回復していきます。
1回目:治療後、耳閉感と耳周囲の感覚の鈍さがやや軽減。突発性難聴の治療は時間との勝負です。聴力低下の症状が固定してしまう恐れがあるので症状が強い間は1週間に2回のペースで行います。その後ある程度症状が軽減すれば1週間に1回のペースで治療をしていくとお伝えしました。
2回目:耳の症状は日によって少し軽減している。朝は比較的症状は軽い。夕方以降は症状を強く感じる。
3回目:耳の症状は楽になっているなというタイミングが増えてきている。
4回目:症状は軽減傾向。聴力検査の結果少し改善傾向にある。症状が落ち着く傾向になってきているので次回より1週間に1回の頻度へ。
5・6回目:耳の症状を感じない日も出てきた。耳周辺の感覚異常も軽減しているが少し気になる。次回は10日に1回の頻度へ。
7回目:耳閉感・難聴はほとんど気にならない。耳周辺の感覚異常も軽減傾向。次回2週間後へ。
8回目:聴力検査の結果、ほぼ正常になっていた。ここで一旦継続治療は終了。
以降は再発防止のためのメンテナンスを定期的に行っていきます。
というのも、複数回にわたり突発性難聴を発症しているということは、生活環境自体が疲労を引き起こしているということに繋がります。環境自体変わらなければまた発症することになります。
今回は8回の治療で正常な状態まで回復しました。
東洋医学的見立て
脈:左 やや細数緩やや沈、右 沈緩滑数、気・営分に反応。
舌:淡紅、白苔
その他:掌が熱い、汗かき、夜間覚醒、シェーグレン症候群の既往、便秘気味、口が渇く、コレステロール高値
基本的に熱による枯れの症状が目立つ所見でした。腎陰虚(火旺も少し出ている)が基本ベースにあり気血の流動性低下により少陽気滞を発症していると推測しての治療。細数脈や白苔舌も治療を進めるごとに減少傾向。
ツボ:然谷、地五会、臨泣、照海、太谿などを使用。
突発性難聴は当院でも治療することの多い疾患の一つです。それほどまでに自律神経系の乱れによる突発性難聴が多いということです。来院される方のほぼ全員が病院での治療後に来られています。もちろんこれは正しい順番ですので「耳が突然聞こえにくくなった」という場合は迷わずに先ずは病院へ行って頂ければと思います。その上で早めに当院へ来ていただくとより早く回復が進みやすくなります。
※すべての方に当てはまるとは限りません。
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