2023年03月04日
症例99 潰瘍性大腸炎と突発性難聴
症例
こんにちは、院長の小畑です。
今回は繰り返す潰瘍性大腸炎と途中で発症した突発性難聴が改善していった患者様の症例です。
患者様について
K様 30代 男性 会社員
15年ぐらい前より潰瘍性大腸炎を度々発症していたが10ヶ月前に発症するまでは約5年くらい症状は無かった。10か月前に発症してから繰り返し発症していて現在は服薬にて症状を抑えている。この症状をどうにかしたいとのことで来院されました。
潰瘍性大腸炎とは
指定難病の一つで、慢性的に大腸の表面がただれたり、えぐれたり、炎症をおこしたりする炎症性腸疾患といわれています。
症状は血便・粘血便(粘液や赤いゼリーのようなものがついている)、下痢(血便を伴うことがある)、便意があるのに便が出ない・出にくい、腹痛(炎症の場所によって肛門付近や腹全体など変わる)などがあり悪化すると発熱・貧血・体重減少などがみられます。さらに重症化すると合併症を伴い大量出血・大腸穿孔(穴があく)・腸閉塞・などに発展する恐れがあります。
原因は現代医学では不明とされていますが、腸内細菌・免疫機能・食生活などの因子が有力とされています。
病院では基本的に服薬治療となります。ステロイドなどの炎症を抑える薬や過剰な免疫力を抑える免疫抑制剤を使用されています。それでも改善しない場合は切除などの外科的手術を行います。
突発性難聴とは
こちらの症例を参照ください → 突発性難聴とは? (※こちらをクリックまたはタップするとページが表示されます。)
K様の突発性難聴は自律神経の乱れにより内耳周辺の小さい血管が細くなり、聴力に必要な細胞や神経に栄養が行きにくくなり正常に働けなくなったことによる突発性難聴と推測しました。
潰瘍性大腸炎はどんな状態だったの?
主な症状は粘液便があり(粘液便は大腸の表面が傷つきそれを保護するために過剰に粘液が分泌されるため発生しています。)、ステロイドやアサコールといった炎症を抑える薬やヒュミラといった免疫を抑制する薬などを服用して症状を抑えている状態でした。特にヒュミラはまずまず有効だったようです。
潰瘍性大腸炎は大腸の表面がただれたり、えぐれたりするのですが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発生原因の胃酸などのように攻撃性の高い消化液を大腸は分泌しておらず、消化液によって大腸の表面が溶けたり傷つけられたりするというのは考えられにくいです。
ここからは診察を通しての推測ですが、ストレスや自律神経の乱れから大腸内の免疫が過剰になり大腸の表面が攻撃され傷つけられているのではないか?という仮説を立てました。また「ヒュミラ」という薬も有効性を示していることからも免疫が過剰に働いてる可能性の十二分に考えられます。自己免疫性疾患(自分の免疫力が自分の細胞などを敵とみなして攻撃してしまう疾患)の可能性も視野にいれて治療を進めていきました。
治療の方針は?
潰瘍性大腸炎では過剰に働きすぎて大腸の表面を攻撃している免疫力を正常化すること、突発性難聴では聴力に必要な栄養を神経や細胞に届けるようにすることをテーマに治療を進めていきました。
いづれも自律神経調整が重要なカギとなります。
どれくらいで回復していったの?
潰瘍性大腸炎は約7か月、約13回、突発性難聴は途中から発症され2~3回で約1か月で回復されました。
治療の経過は?
1回目:潰瘍性大腸炎の治療のために自律神経系や感情のコントロールがしやすいように治療。1週間に1回の頻度で。
2回目:便通は安定していて下痢はしていない。粘液便は出ている。頭痛や動悸もでていない。
3回目:現状維持。頭痛や動悸が気になるときがあった。頭痛が起きにくいように少し使うツボを変更。次回から2週に1回へ。
4回目:粘液便一時的に増えたがその後減った。動悸はなし。頭痛は天気が悪いと出る。
5回目:粘液便は減っている。頭痛もなし。次回から3週に1回。
6回目:1週目のみ粘液便が出たが2週目以降は調子よかった。前回よりも調子が良いように感じる。
7回目:2週間調子良く過ごせた。3週目に少し粘液便が出てきた。手足の腱炎が起きた。
8回目:2週目まで調子よく3週目に少し粘液便がでる。手足の腱炎の症状落ち着く。
9回目:前回同様後半に少し粘液便が出る。
10回目:突発性難聴発症。聴力低下、耳閉感、耳鳴り。次回9日後。
11回目:聴力回復。高音域が少し聞きづらい。粘液便は出ていない。次回1か月後。
12回目:聴力は全快し高音域も聞こえるように。粘液便は少し出ることはあったがあまり気にならないレベル。
13回目:便通は問題ない。粘液便も気にならない。全体的に調子がいい方に向かっている。今回で短いスパンでの継続治療は一旦終了。以降は1か月に1度のメンテナンスを行い調子を維持できるようにお越しいただいています。
途中、突発性難聴というイレギュラーに見舞われましたが、このような回復過程でした。
東洋医学的見立て
※ここは専門的なお話になります。興味のある方はお読みください。
脈:沈緩滑細やや渋、左尺位沈位内側弱い
舌:淡
その他所見:手足の冷え、寒がり、寒気がする、頭痛(側頭部)、動悸、眼精疲労、胃痛、お腹が張りやすい、逆流性食道炎など
脾腎陽虚、肝脾不和などの線があると推測。
治療初期は脾腎陽虚ベースで治療を行ったが、修正を加え肝脾不和の治療を行った。
使用主なツボ:復溜、公孫、大都、行間、三陰交、太衝など
施術者の思い
潰瘍性大腸炎などの難病指定されている疾患を鍼灸院ではちょくちょくお目にかかります。現代医学では服薬で抑えるのが精一杯だったり、どうにもならないものが東洋医学の力で改善する場合があります。K様の潰瘍性大腸炎は再発を繰り返しています。ですのでこのまま放っておくといずれまた再発する可能性があります。しかし定期的に体調が崩れないように働きかけていると再発を限りなく起きにくく、起きたとしても軽症で済ませることが可能です。
(※この症例が全ての方に当てはまるというわけではございません。)
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