2022年05月25日
症例83 膝の軟骨がすり減っていると言われた女性
症例
こんにちは。副院長の藤森です。
今回はだんだん膝の痛みが強くなって、病院で膝の軟骨がすり減っていいると言われた患者様の症例です。
目次
患者様について
I様 60代 女性 工場内パート勤務
来院の半年前から歩行時に少しずつ膝が痛くなるようになり病院で画像検査を受けたところ、膝の軟骨がすり減っていると言われ痛み止めで様子をみていたが、歩くと激痛になって耐えきれなくなり当院に来院されました。
膝はどんな状態だったの?
膝の内側が、歩く・立った状態で膝を曲げる・上向きに寝て膝を伸ばすなどの動作をすると痛みや突っ張り感が出る。
膝に少し水がたまっているように腫れがある。
という状態でした。
なぜこのような状態になったの?
I様は長年広い工場で1日数万歩ぐらい仕事で歩いていました。これは膝の軟骨がすり減る主な原因であったと考えざる負えません。
では膝の手術をしないと膝の痛みは治らないの?となるかもしれませんが、実はそうとも限りません。
もう一つ原因として挙げられるのは、「関節炎」を引き起こしやすい身体のコンディションです。
関節炎は膝だけに限らず指・肘・首・肩など全身の関節に起こるものですが、これらの症状はホルモンバランスが乱れる「更年期」という期間に多発しやすくなります。
更年期に女性ホルモンの一つである「エストロゲン」が減ると、一般的に筋肉・関節の軟骨の潤いが少なくなり柔軟性が低下するとされています。その結果、膝の軟骨を傷める要因になったと考えました。
また、更年期で卵巣から女性ホルモンが分泌されなくなると、ホルモンの司令塔である「脳」が混乱して自律神経を乱します。この時脳は卵巣に女性ホルモンを分泌するように繰り返し指示を送るためにとあるホルモンを生産します。このホルモンは身体に「熱」をもたせる作用があります。この熱が炎症を起きやすくしたり、引きにくくしたりすることがあります。
上記のことから、I様の症状は「膝の使い過ぎ+更年期によるホルモンバランスの乱れ」で関節痛が起きやすいコンディションにより発生していると考えました。
どのように治療をしていったの?
すり減ってしまった軟骨は元には戻せません、出来る範囲は膝の痛みの原因となっている「炎症」を引かせるようにすること、更年期により乱れたホルモンバランスを調整して関節に炎症が起こりにくいコンディションにすることの2点をポイントに治療を進めていきました。
どれくらいで回復したの?
仕事をしながら完全に痛みのない状態になるまでに「約4~5ヶ月」ぐらいでした。
ただ、一番最初に訴えられていた激痛は2回目の来院時には消えて仕事には行ける状態になっていました。
その後は激痛が再発することはなく軽い痛みや違和感を少しずつ落ち着けていく形になりました。
序盤の3回は膝の強い炎症を抑えるために使い、その後は炎症が起きにくいコンディション作りをしていきました。最初の3回は週に1回、2週間に1回を5回、3週間に1回を2回の頻度で落ち着けていきました。
完全に落ち着けきるまで計10回の治療を行いました。
東洋医学的見解
※ここからは専門的見解で解説しますので、興味のある方はご覧ください。
脈:やや滑細数、回復力低下を示す反応
舌:淡紅、薄白苔、やや小さい
やや不安感がつよい、睡眠もやや浅め(一時的に2時間に1回起きるような感じだった)
診察から、やや陰虚傾向で火が上がりやすいよう。この火が心火として上がると不安感を引き起こしたり、睡眠の質を下げたり、関節の炎症も発生させやすくなっていると判断しました。
使用したツボ
衝陽、照海、時々内関や太陵を使用
施術者の思い
膝がすり減っていてこの痛みを治すには手術しかない・・・と思われている方が多いと思います。
しかし治療をしていると変形が強くて痛みが出ている膝でもかなりの確率で痛みが減ったり、時にはほとんど感じなくなる方もおられます。
I様のように年齢も60代と若く、変形もさほど見当たらない場合は特に効果が期待できます。
手術を考える前に一度当院に相談いただければと思います。
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