2021年10月30日
症例74 膝が痛くて歩行困難な高齢女性
ブログ
こんにちは。藤森です。
今回は、膝が短期間でだんだん痛くなり、歩行が困難になった患者様の症例です。
目次
患者様について
I様 70代後半 女性
以前より膝が痛いな・・・とは思っていたが、ここ2週間ぐらいで歩くのがつらくなるぐらい痛くなったとのこと。
整形外科に受診するも「年齢のせい」や「手術しないと治らない」と言われたので一度当院に受診してみようと思われ来院されました。
どんなふうに痛んでいたの?
歩いたり、しゃがんだりすると膝の内側に強い痛みが出る。膝が熱をもっていて腫れている。
膝がO脚に変形しているタイプの「変形性膝関節症」があり、以前より痛んでいたのはこの変形によるものでした。
そこに何らかの負荷がかかりさらに傷めたことにより歩行が困難になるほどの痛みが出ているようでした。
変形性膝関節症とは?
膝の関節が加齢に伴う筋力の低下や長年の使い方によって変形して、関節の中にある「軟骨」がすり減ることにより痛みが発生する疾患です。
主に、ガニ股になる「O脚」という内反変形と内股になる「X脚」という外反変形があります。
O脚は膝の内側の軟骨が、X脚だと外側の軟骨がすり減りやすくなります。軟骨がすり減ると炎症が起き痛みが発生します。
I様の場合は、O脚傾向で膝の内側の軟骨がすり減って痛みが出ている状態でした。
そこに何らかの外力が加わり炎症が強くなり、より強い痛みになっていました。
痛みが落ち着くまでの流れ
膝の痛みで症状が強い時は少し治療を詰めてする場合があります。今回はある程度楽に過ごせるまで1週間に2回のペースで治療を行いました。
ある程度痛みが引いて歩けるようになるまで・・・3回
膝の腫れ・熱感・痛みが引いてきてさらに歩きやすくなるまで3回
計6回(3週間)ぐらいでだいぶ歩きやすくなりました。その後は頻度を空けて1週間に1回のペースで行いました。
今まで通り違和感なく過ごせるまで2回(1週間に1回)
計8回(5週間)でもとの生活が送れるまでに回復しました。
I様のお身体を東洋医学の目線で見てみると・・・
ここからは専門的なお話になります。興味のある方だけお読みください。
舌は赤く、乾燥気味。
脈は強くボコボコ脈を打つ感じ、回復力の低下を示す反応もありました。
その他に、不眠症、イライラしやすい、ストレスの多い環境、暑がりなどの所見がみられました。
これらの所見は身体が余分な「熱」をもっているというふうに判断します。
熱傾向の身体では炎症による痛みの症状が発生しやすくなったり、治りにくくなったりします。
I様を回復させるにあたっては痛みを引きにくくしている熱を減らす必要があります。
そもそも余分な熱の発生にはいくつか種類があります。
暴飲暴食・・・カロリー(熱量)過多で熱が発生しやすくなっている。
女性ホルモンの乱れ・・・主に更年期の時に多く発生し、LH(黄体形成ホルモン)という体温を上昇させるホルモンが過剰分泌されることにより余分な熱が発生しやすくなります。
加齢・・・年齢を重ねていくと、老化のタイプが人によって大きく2タイプに分かれます。冷え傾向でむくみがちのお身体になっていく方と体の水分が少なくなり熱傾向になっていく方に分かれます。
など、この他にもたくさんあります。
I様は加齢により身体が熱傾向になっていると考えられます。また加齢による熱傾向になられている方は骨がゆがむように変形しやすくなります。
また、高齢の方に多い特徴として「回復力の低下」があります。年齢とともに傷ついた部分を新しくしたり、炎症を引かせて回復しやすい状態を作ったりする作用が低下していきます。個人差はありますが、長年治らない症状があったりする場合は回復力が上手く働いていない可能性があります。
ですので、I様の治療は、「回復力の向上」と「余分な熱を引かせる」ことにより膝の関節に発生している炎症を引かせて傷んでいる部分の回復を促すように働きかけていきました。
1診目:余分な熱を冷まして膝の内側の炎症を引かせるツボ(照海)と回復力を向上させて傷んだ膝の回復を促すツボ(衝陽)に鍼をした。
2診目:前回の治療直後は比較的症状が軽減した。その後、徐々にもとに戻る。
3診目:膝の熱感が少し引き、歩行時の痛みが少し軽減した。
4診目:動きすぎると痛む、とりあえず普通にはなんとか歩ける。
5診目:膝の熱感がかなり引いてきた。
6診目:歩行時にやや痛みはあるが、あまり気にならなくなってきた。ここまで週に2回の頻度で治療、ここからは週に1回で治療。
7診目:膝の熱感がほぼ無くなり、歩行時の痛みもほぼ無し。
8診目:膝の熱感は感じられない、歩行も普通に行えるようになった。
8診目終了後あたりでは今まで痛んでいた分の膝の痛みもかなり軽減していました。
施術者の思い
病院で手術しないと治らない、歳のせいだからあきらめて、と言われたり、整骨院や整体で治療してもその時はよくなるけど結局もとに戻ってしまう・・・などの理由で当院に来院される方は非常に多いです。
今回のI様のような変形性膝関節症は変形自体を治すことはできません。しかし痛みの症状を抑えたり上手くいけば痛みなく過ごせたりすることができます。手術しなくても、あきらめなくても楽に過ごせるようになる可能性が鍼灸にはあります。
I様は最後に、先生のおかげで手術しなくて済んだ、ありがとうね。とおっしゃって下さりました。手術をしないで済むならそれにこしたことはありません。そう感じていただける患者様が1人でも増えるよう精進してまいります。
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