2021年10月15日
症例72 椎間板ヘルニアによる脚のしびれと激痛でお困りの女性(50代)
症例
こんにちは。
要鍼灸院の小畑です。
今回は椎間板ヘルニアによる激痛としびれでお困りだった女性患者様の症例です。
目次
患者様について
A様
52歳・女性
主訴:左脚のしびれと激痛
(整形外科にて腰椎椎間板ヘルニアとの診断)
伴う症状:頭痛・めまい・耳鳴り
そもそも「椎間板ヘルニア」ってなに??
よくスポーツ選手が腰のヘルニアでしばらくプレーできなくなったとか、腰痛に困る方が「椎間板ヘルニアだった」などと聞くことはありませんか?
でも「そもそも椎間板ヘルニアってなに?」と思っている人が多いのではないでしょうか。
椎間板とは背骨と背骨の間に挟まっている軟骨のような円盤状の組織で、中にゼリー状の核が含まれています。
繰り返し腰をひねる動作や曲げ伸ばしの動作が続いたり、体の重みによる圧力が背骨にかかり続けたりすると、椎間板にヒビが入り、中身の核が外に飛び出してしまいます。
この「中身がはみだしてしまう状態のこと」を「ヘルニア」といいます。
この結果、飛び出した核がすぐ背骨の隙間から出てくる神経(とくに坐骨神経といいます)を圧迫してしまいます。
この神経の圧迫が神経の根本に炎症を引き起こすと、腰や臀部、脚にしびれや痛みを引き起こします。
この痛みがひどい場合は、どんな体勢でも痛みやしびれが止まらず、動こうとすると激痛が走り、痛みから逃げられず非常に苦痛にさいなまれることになります。
症状は軽度なものから重度なものまで人によってさまざまです。
これが椎間板ヘルニアによる痛みです。
Aさんの来院までの流れ
来院の2か月前から脚にびりっと痛みが走るようになった。
仕事の多忙さと、父の病状悪化による転院手続き、持病を抱えながら家業の仕事をする母を手伝うなど・・・仕事の多忙さと身内の用事が同時に重なってしまい多忙を極めていたA様。
そんななか発症から2週間ほどたったころに整形外科へ。
腰椎椎間板ヘルニアと診断され、ボルタレン(非常に強い痛み止め)とプレドニン(ステロイド薬)、リリカ(神経障害性疼痛のお薬)を処方された。
薬を飲んでいたが、ステロイドの食欲増進作用のせいで10日ほどで7kg太ってしまった。しかし脚の痛みはいっこうに減らず、痛み止めを飲んでいても痛みは強く出ている。
体重も増えてきているし、腰により負担がかかっているかもしれないし、何か良い方法はないかと思っていた。
そんな時に当院の患者様の一人から紹介を受けて当院に来院した。
という流れでした。
どのくらい治療期間を要したか?
A様のケースでは痛みがほとんどなくなるまでに約1か月半~2か月かかりました。通常3~6か月かかることもあり、椎間板ヘルニアの回復経過としてはかなり早いほうの部類に入ると思われます。
鍼は何本くらい刺したか?
A様の場合、平均して2本の鍼で治療しました。
痛みはどう変化したか?
当初、立っていても座っていても常に左脚にかなり強い痛みとしびれが出ていて、立って状態を反らしても前屈しても激痛としびれが走る状態。歩く際も左脚にあまり体重をかけられず引きずっているような歩き方でした。
二診目(3日後)
術後当日は痛みが軽減。次の日にふとした動きで痛みが戻りそこからはそのまま。
三診目(3日後)
術後2日後に痛みが軽減。来院当日はやや痛みが増しているものの、当初ほどのきつさではない。
四診目(1週間後)
左脚の痛みが劇的に改善。痛みをほとんど感じていないとのこと。
五診目~八診目(1~2週間ごと)
治療から数日後に痛みが出ることはあれど徐々に痛みの出る頻度が減っていき、八診目には痛みが日常出ていない状況までもっていくことはできました。
その後は状態が維持されるようメンテナンス的な治療として1か月に一回ほどのペースで治療を継続されています。
東洋医学の視点から
(ここからは専門性があがり、少しわかりにくいかもしれません。興味のある方だけお読みください。)
脈は細く緩い。、舌は淡く、薄い白苔が乗っていました。
脈の情報と多忙を極めているというA様の状況から、過労から腰に負担がかかっていたことが考えられました。
過労で腰痛が出る状態は東洋医学では腎が弱っていると考えます。
腎が弱ると膝や腰が痛むことがあるのですが、このような現象は以下のような流れから起こります。
疲れる
↓
腰まわりの筋肉に力が入らなくなる
↓
腰椎(腰の骨)に上半身の重みが直接かかる
(圧力が分散しない)
↓
骨と骨の間にある椎間板に圧力が強くかかった状態が長くつづく。
↓
椎間板が圧力でつぶれてくる。
↓
椎間板に亀裂が入る。
↓
椎間板の中の核が飛び出す。
↓
飛び出した核がそばを通る神経を圧迫する。
A様の椎間板ヘルニアはこのような流れから過労による腎の弱り(腎精不足)から起きていると読みました。
ですから治療する際は、腎精を補い、腎の弱りを強くする治療を行うことにしました。
また椎間板ヘルニアは腰骨の左右にかかる圧力のバランスが悪いと余計に中の核が飛び出してしまいます。
左右の筋肉のバランスがわるくならないようにすることを意識しました。
そこでツボ選びとしては、腎精を補い、胃腸の働きを助け、体力を補充し、腰のインナーマッスルを緩め、腰全体の筋疲労を取る目的で
一診目
右衝陽(裏の湧泉まで透鍼)
右志室
二診目~八診目
右衝陽(湧泉まで透鍼)
左右の筋のバランスをとるため、
左水泉
というツボを取りました。
施術者の思い
椎間板ヘルニアは簡単に回復するタイプの腰痛や坐骨神経痛ではありません。
手術を選択しない状況の場合、痛み止めやステロイドを投与されることもありますが、副作用によって体重増加、むくみ、その他の症状がでることもあってそれだけに頼る治療となると、副作用的な弊害も少なくありません。
そんなときに鍼灸治療が大きな助けとなることがあります。
MRIなどの画像上ではたとえヘルニアが引っ込んでいなくとも、椎間板や神経根(神経の根本)の炎症が引くと痛みが落ち着くことがある。
ということを知ってまず知っていただきたいです。
鍼灸治療によってヘルニアの起きている部分の負担を減らし、炎症をやわらげ、回復の速度をかなり上げることができます。
あくまでその人の状況によるものですべての椎間板ヘルニアに対応できるとは限りませんが、当院にご来院された椎間板ヘルニアの患者様の7~8割は回復に至ることができています。
「痛みでつらい」
「今までの治療では回復している実感がない」
という方は
一度当院までご相談ください。
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