2021年06月05日
症例67 脚と股関節のピリピリ感やつっぱり感などの異常感覚にお困りの女性
症例
藤森です。今回は下肢や股関節の痛み・異常感覚でお困りの患者様の症例です。
患者様について
K様 40代 女性
来院の2カ月前から右股関節の前あたりが痛くなり,それがだんだん足や下腹部、左脚に広がっていき、治る気配がないのが不安とのことで来院されました。
目次
西洋医学的見解
右側は下腹部から股関節の前と下肢全体がつっぱり感やピリピリとした痛みがあり、下肢には何かに包まれたような異常感覚がある。左側は右ほどではないが下肢につっぱり感やピリピリ感があるという状態でした。
この痛みや異常感覚は、安静時(じっとしている時)に強く感じるとのこと。また、右下腹部は腰を反らす動作をすると痛みが強くなる。
また、朝の起床時が一番症状が軽く、逆に立ち仕事で夕方になるにつれて症状が強くなるといった感じでした。
これらの情報は腰の関節付近で神経の圧迫があり、疲労がたまってくるとより圧迫が強くなるという可能性を示します。
腰部から出る神経は、場所によって支配している領域が異なります。
画像をもとにみていくとK様の場合は、右下腹部・右股関節の前・右左下肢全体に症状が出ているので第1~第3腰椎神経というところの神経圧迫により神経痛が出ていると推測されます。
東洋医学的見解
脈は細くやや丸みを帯びていて、やや疲れがたまっている傾向の反応。
舌は細く痩せていて、舌のまわりに歯型がある。
胃腸の働きがやや鈍く、栄養を含んだ血を作る力が不足している反応。
これらの情報から東洋医学的には「脾腎陽虚」というものがベースにあると考えました。
脾腎の陽虚とは、身体の内側を温める力が低下して、胃や腸などの消化器を温めにくくなり、働きが鈍くなっているということを意味します。
胃腸の働きが鈍くなると、食べ物の消化吸収する力が弱くなります。身体を回復させたり、調子のよい状態を維持するには食べ物から吸収した栄養が必要になります。
筋肉が柔らかさを保つためにはタンパク質や糖質などの栄養が必要です。胃腸の働きの低下はすると血液中の栄養が減り、筋肉を硬くしてしまう要因になります。
それに加えて、仕事で時間が経ってくると症状がきつくなるということは、腰の筋肉が疲労により硬くなっていることも考えられます。
消化吸収不良による筋肉の栄養不足と仕事による筋肉の疲労が原因で、腰の骨周辺のインナーマッスルは硬くなりやすくなり、腰の骨と骨の間が神経を圧迫して下腹部~下肢に神経痛を引き起こしているのではないかと推測しました。
治療方針
胃腸の働きを正常にして栄養を吸収しやすくして、強張っている筋肉を柔らかくして、骨と骨の間での神経圧迫を減らし、症状の改善を図るという方向性で治療を進めてきました。
ツボは主に足の甲にあるツボ(衝陽)をメインに使いました。
治療経過
1回目:施術後、右下腹部と左下肢の違和感が消失。次回は1週間後で回復具合をみて治療間隔を空けていく計画で進めていきました。
2回目:1週間の間症状はだいぶ軽く過ごせた。左下肢の症状はほぼなし。右下腹~下肢の症状は少し残る。施術後右下腹~下肢の痛みも消失。
3回目:左下肢の症状は消失。右下腹部~下肢の症状は軽減しているがやや残存。
4回目:右下腹部の症状は1週間出なかった。右下肢の症状が少し残存。回復がかなり進んできたので治療頻度を2週間に1回に。
5回目:右下腹部の症状消失。2週間の間、全然症状なく過ごせた。次回3週間後で問題なければ一旦治療は終了する運びに。
6回目:3週間とくに問題はなかった。痛みも全然でていない。経過良好のため治療は一旦終了。その後痛みが出るようなら連絡いただくということで治療は一旦終了ということになりました。
施術者の思い
痛みや違和感はあるけど、「まぁそのうち治るだろう」と思っていたら数か月経っても治らないというケースはよくあります。「えっ?もしかして一生このまま?」と不安になるのも無理ないと思います。実際に数か月単位で症状に全く改善が無いものは、そのままにしててもなかなか治らないことが多いです。このような場合、身体の回復する力が少なくなっています。鍼灸を通して身体の回復力が戻ってくるときちんと改善に向かっていきます。
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