2020年08月08日
症例47 右肩の痛みでお困りの女性
症例
こんにちは、藤森です。
今回は肩を動かした時の痛みと夜中に疼いて目が覚めるという症状でお困りだった患者様の症例です。
目次
患者様について
I様、60代女性、主婦
主訴:右肩を後ろに引くとき(外旋時)の痛み、腕をあげきったときの痛み、窓を開ける時に肩から肘にかけて痛い、夜中に疼く、寝返りで目が覚める。
1カ月半前より肩が痛くなりはじめ、痛み止めを飲むなどして様子をみていたが、痛くて夜も眠れず一向におさまりそうになかったので当院へお越しになられました。
西洋医学的見立て
肘を90°に曲げて肩関節を外旋(下の図のように胸を開くように肩を引く動作)すると真横の位置から5°~10°ぐらいで肩が痛む、挙上時(腕を上に上げる動作)は挙げきると痛む、それと同時に肩甲骨の上部~肘にかけて痛みがでるようでした。
外旋時や挙上時の肩の痛みは肩関節まわりの筋肉を痛めている可能性を意味します。
同時に現われた肩甲骨上部~肘の痛みは、胸の筋肉が硬くなり神経を圧迫したことによる神経痛(小胸筋症候群)であると疑いました。胸にある神経は圧迫されると肩や背中・腕など広範囲に症状がでるようになります。
また、下の図をみて頂くと赤丸の筋肉の下に神経が通っていることが確認できます。小胸筋症候群はこの部分で神経の圧迫がみられます。
夜間の目が覚めるほどの痛みは筋肉の炎症が強いことを意味します。
このことから、肩関節周囲炎(肩関節まわりの筋肉が損傷し炎症を起こしている状態)と小胸筋症候群の併発があるとみました。
東洋医学的見立て
脈は沈んで細く、舌は白みがかったピンクですこしブヨブヨした見た目をしていました。
その他に、食後に眠い、目が疲れる、寒がり、手足が冷たいなどの症状がありました。
これらをまとめると、身体を温める力が低下して胃腸が冷えて消化吸収の働きが鈍くなり、栄養のある血液を作りにくくなっているということを意味します。このような状態を東洋医学で脾腎陽虚といいます。
栄養とはこの場合は筋肉の柔らかさを維持するために必要な栄養のことを意味します。筋肉はその栄養を用いて新しい筋肉を作り、古くなった硬い筋肉と入れ替えを常に行っています。通常はこうすることで痛めにくい柔らかい筋肉を維持しています。
この方の場合、上記にある筋肉の入れ替えサイクルが遅くなり筋肉が硬くなり、肩では筋肉を傷め、胸では硬くなった筋肉が神経を圧迫する、といったことにつながっていると推測しました。
治療方針
筋肉が硬くなって痛めてしまっているので、痛めている部分の回復と柔らかさを取り戻すために胃腸の消化吸収を正常に戻し、血液を通して筋肉に栄養供給ができるようにしていく必要があります。
身体を温め胃腸の消化吸収を高める…かかとの内側にあるツボ
栄養のある血を作りやすくする…ふくらはぎの内側にあるツボ
これらのツボをメインに使って治療を進めて参りました。
経過
1週目:夜間の肩の疼きが軽減しはじめ眠れるようになってきました。肩の動作時の痛みや肩から肘の痛みは変わらず。
2週目:夜間の疼きはあまり気にならず、肩の外旋時の可動域が向上(20°程度まで)しました。挙上時や肩から肘の痛みはあまり変わらず。
3週目:全体的に痛みの程度が減り今まで痛くてしなかった動作をするようになった。外旋時の可動域が少し向上(25°程度)、挙上時の痛みも軽減。
4週目:外旋時の可動域(30°程度)向上、挙上時の痛みも軽減、肩から肘の痛みも少し軽減してきました。この段階では動作で少し痛みがあるものの日常生活では支障があまり無い状態になっていました。
ここまでで目標の1カ月で症状が日常生活で支障があまり出ないレベルになんとか回復して頂けました。
この先は、ご本人が長期で家を空けられるとのことで一旦治療を終了し、戻ってこられた時にまだ痛むのであればご連絡いただくという形になりました。
施術者の思い
肩の痛みで睡眠時に目が覚めるのはかなり不快で、もう一度寝ようにも痛くてなかなか眠れません。こうなると睡眠不足で身体が回復しにくくなり余計に長引いてしまうことが多いです。I様のケースでは早期に肩の炎症が減り夜間の痛みが軽減したので、比較的他の症状の改善も早くに現われました。治療後数か月が経ちますが再発したとのお話はありません。
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