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2021年06月11日

症例68 腰と足の痛み(座骨神経痛)になやむ男性(70代)

症例


こんにちは。院長の小畑です。





今回は高齢の男性患者様で腰痛と脚の痛みにお悩みだった患者様の症例です。




目次



  1. 患者様について

  2. 西洋医学的見立て

  3. 東洋医学的見立て

  4. 治療

  5. 施術者の思い


 




患者様について





N様





男性・78歳





無職(定年退職)





主訴;右腰の痛み、右ひざの痛み





既往歴:糖尿病、3年前に脊柱管狭窄症と診断された経験がある。





R腰に痛みがあり、(いつから発症したかが定かではない)、R膝にも痛みを感じるというN様。





ご自身では膝付近が痛むとおっしゃっていますが、よく聞いてみると膝から下腿にかけてが痛むとのことでした。





また長時間立っていたり、座っていたりすると腰痛が強くなる。長時間歩いていると膝の痛みが強くなり休憩すると少し歩けるようになるとのことでした。





N様は多趣味で、太極拳を習っており、現在は脚が痛かったりするのでお休みされているとのことでした。







西洋医学的見立て





腰を後屈すると腰の痛みが強くなり、R下肢の痛みが強くなる。腰の前屈・側屈では問題ありませんでした。





このことから、下部腰椎での椎間関節か椎間板周辺に炎症があり、かつ、腰部から伸びる座骨神経根にも炎症がある状態である可能性がありました。









また一定時間歩くと、右脚の痛みが強くなりしばらく休むと再び歩くことができるようになること(間欠性跛行 かんけつせいはこう)や、過去の脊柱管狭窄症の診断があることから、腰椎周辺に変形があり、背骨の後ろにある脊柱管という神経の通っているトンネルがせまくなり、神経が圧迫されている可能性がありました。









(間欠性跛行は脊柱管狭窄症や閉塞性動脈硬化症という病気で特徴的に表れる症状です。)





念のため、膝に炎症がないことを確認するため、膝の曲げ伸ばしなどの動作では痛みの増幅がないことを確認いたしました。





上記から、N様が「右ひざのいたみ」だと思っていた痛みは、実は





腰から伸びる座骨神経上の痛みだったと判断しました。







東洋医学的見立て





上記の情報を頭に入れながら、N様の脈を診てみました。





脈が丸く中身の詰まった打ち方をしています。これを「滑脈(かつみゃく)」といいます。





胃腸に栄養がたくさん詰まっている方に見える脈ですが、N様に食事はたくさん食べるのか聞いてみたところ、





「普通ぐらいには食べるけど、さほど多くはない」とのこと。





そこで、とくに血液検査で高い値がでるような項目はないかを尋ねました。





すると





「糖尿病」があるとのことでした。





糖尿病は糖の代謝をつかさどるインシュリンというホルモンの分泌がうまくできなくなり、血糖値が高いままの状態を維持してしまう病気です。





脈に現れる丸い脈は、血中に余分な栄養が含まれるときに起きる傾向があり、N様の丸い脈はこの血糖のコントロールが上手にいかないことと関係があるようでした。





また問診により「軟便になりやすい」傾向があること、脈診の細かい情報により、冷えタイプ(陽虚)か熱タイプ(陰虚)に分けるなら、冷えタイプに分類した方がよさそうでした。









また年齢は78歳と高齢です。





少なくとも、加齢による骨の変形、神経機能の低下などが多少なりとも起き始めていることは推測されました。





東洋医学では、加齢によってでる症状は内臓でいう「腎」が弱ることで起きると考えます。





腎が弱ると、体の年齢が実年齢より上がります。





そんな状態で特に影響が表れるのが、骨や関節の強さ









N様の腰や右脚の痛みはすくなくとも、腰の骨の変形により、腰椎のすきまから出てくる神経を圧迫してでていることが明らかでした。これは腰を後屈すると脚に痛みがでるなどの西洋医学的な所見から見えていたことです。





ですから、N様の腰痛や脚の痛みを回復させるには腎を強くするということが必ず必要でした。





腎を強くする治療をすると腰の中では何が起きるのでしょうか?





腎が弱るというのは、体が疲労して機能低下した状態です。





ですから、腰の骨回りについている筋肉群が疲労すると力が入りにくくなります。





骨は筋肉の力に支えられて関節の負荷を減らしているので、周囲の筋肉の力が入りにくい状態では、腰の関節や、腰椎の間にはさまる椎間板により大きな重力がかかってしまいます。





これが、椎間板に負荷をかけて炎症を起こしたり、神経の通り道をせまくしてしまったりする要因になります。









ですから腎を強くすると、これら、腰周りの筋肉が疲労しにくくなり、椎間板や神経の通り道にかかる圧力を減らしてくれるというわけです。





また、N様の場合は、糖尿病があり、胃腸から取り込んだ栄養の吸収・分解・代謝がうまくできないというなかで、体に余分なむくみを生みやすくなっていました。





ですから、腎を働かせて、利尿させることでむくみを抜きつつ、胃腸と肝臓、すい臓の連携をスムーズに行わせ、栄養の代謝を上手に行うよう体にはたらきかける必要がありました。





それにより、腰の中の関節内のむくみを取り除くことができると考えました。







治療





初診





そこでまず選んだのが、「腎」にかかわる二つのツボ。





「水泉」と「太谿」です。





二つとも足にあるツボです。





冷えタイプの体を温め、胃腸の働きを促進するのに、左側の水泉。





余分な栄養は熱になるのでこれらの熱を冷ますために右側の太谿。を配しました。





この二つのツボで腰の痛みと右脚の痛みが消失したのでいったん初診の治療はここで終わりました。





脊柱管狭窄症と診断された経験があり、年齢的にも骨の変形などが絡む痛みであろうことから、「まずは1週間~10日ほどのペースで4~5回続けてみることで、椎間板や神経の根本にある炎症が落ち着いてきたら、治療間隔をあける」という計画を組みながら治療を進めることにしました。





二診~五診(10日ごとの治療)





初診の治療後、痛みは2割ほど軽減。





前回の水泉、太谿の配穴に胃腸の働きを助ける衝陽という足の甲にあるツボを追加。





施術後、腰も右脚も痛みは軽減。





三診目~五診目で同様の治療を行い、徐々に腰も右下肢も痛みが軽減してきた。





六診~九診(7日ごと)





ここでN様は自転車で転倒されるというアクシデント





転倒により右ひざ関節を痛めてしまった。





膝は90°以上しゃがめず、仰向けで寝た体勢でも膝を120°以上曲げると痛むという状態でした。





膝関節の各検査法を行うと、膝の側副靭帯と半月板を痛めている模様でした。





ここから膝の外傷治療を含めたツボ選びに変更。





水泉、照海(腎のツボで炎症を減らす作用の強いツボ、腰や膝に働く)、解谿(胃腸のツボですが、こちらも膝の炎症を減らす作用が起きるツボです。)





治療により、膝を曲げられる角度が広がりました。





外傷を早く鎮めるため、一週間ごとにすこし治療間隔を狭めました。





九診目にはかなり右ひざの痛みが軽減。腰や右脚の神経痛も以前よりも引き続き少なくなってきたようでした。





十診~十二診(二週間ごと)





右ひざの痛みがかなり軽減し、腰や右脚の痛みも減りつつあるので治療間隔を広げました。





そして回復が進んできていたので、少ない鍼でも体が整うようになってきたため、ツボを一つ減らしました。





ツボは水泉・太谿。初診で選んだツボに戻ってきました。





二週間ごとの治療で十二診目には立っていても腰痛はほとんどでないし、以前よりもかなり長時間立っていたり、歩いたりできるようになっていました。膝もしゃがめるようになり、ほとんど痛みのない状態になったので、治療を一旦終了し、不調を感じたらご連絡をいただくという形にしました。







施術者の思い





高齢でかつ、脊柱管狭窄症を患っていて、糖尿病も持っているとなると回復に時間を要することも多いです。





N様の場合はご年齢のわりには途中膝のけがなどもありましたが、比較的スムーズに回復された症例となりました。





このような回復力というのは特に高齢になると個々人でかなり差があり、回復が非常にゆっくり進むケースも多いです。





N様のお体は回復力がまだしっかりしていたのだろうと思います。





N様の例のような加齢による背骨の変形と関わりの深い症状の場合、今後も症状が出てくる可能性を秘めていますので、折にふれて治療をしておく必要が出てきます。





治療からは一旦ご卒業いただきましたが、今後、症状を感じた場合は早めにご連絡いただくようお伝えいたしました。


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